中村の読書日記

読書を中心に、徒然なるままに

シンガポール

13冊目。
物語 シンガポールの歴史(2013年)

物語 シンガポールの歴史 (中公新書)

物語 シンガポールの歴史 (中公新書)

 

シンガポール。お洒落な国だと聞いています。国土が狭くて、自然がないショッピングの国。ゴミを捨てたら罰金。そして、リッチ。

 

でも、よくよく考えてみたら、シンガポールのことを全く知らない。世界史に出てきたっけ?全く覚えてない。なんだこの国は。

 

ということで、この本を手に取った。そしたらシンガポール、すんごく面白い国でした。

 

大雑把に歴史を辿ると、19世紀前半にイギリス人のラッフルズシンガポール島を植民地にして歴史が始まった。そのあと途中で日本の支配が少し入って、そのあとマレーシアから独立し、初代首相リー・クアンユーというガッツのあるトップが基本的な国づくりをしたという感じ。

 

シンガポールには、中国系が74%、次にマレー系が13%、そしてインド系が9%。多民族国家。かつて第二次世界大戦時にシンガポールを支配した日本は、華人を弾圧した。中国に攻め入った時、彼らの支援によって苦戦したと考えたからだ。彼らを一箇所に集め反日かどうか、共産主義かどうかを確認し、該当したものはトラックでセントサ島(ユニバーサルスタジオシンガポールがある島!)などに運ばれ、大きく掘られた穴の中で銃殺された。負の歴史。

 

もともとまとまりがなかったシンガポールだが、絶対だと思っていたイギリスが日本に敗れ、イギリス以上に高圧的な日本の支配を経験することで、自分たちのことは自分たちで守らなければと徐々に意識が高まっていく。

 

リー・クアンユーという人は徹底的に実利を優先した。シンガポールは東京23区と少しくらいの大きさしかない。資源もない。だから外国企業をどんどん誘致、彼らを高待遇するシステムを整備する。そうしないと生き残れないからだ。政治も文化も全ては経済発展のための手段。教育だって合理的に。小学生の段階から選抜テストを行い、能力分けを行う。能力のないものは進学の道が閉ざされていく。一方高校卒業時の優秀者には、海外留学を勧める。帰国後は数年間官僚として働くことを条件に政府が奨学金を給付するというシステム。優秀な人間こそが国を作るべきだ。徹底している。

 

おかげで、シンガポールは発展した。しかし、文化はスッカスカ。全てを経済に捧げてきた代償である。また、とにかく資源がないので、食べ物や水は隣国マレーシアとインドネシアに依存している。安全保障に関してはアメリカ。シンガポールの生殺与奪は外国が握っているという不安定さ。

 

ちなみに、今でも当時の日本支配を味わった世代や中国系の中には反日の人もいるらしい。そらそうだな。一方で若者は日本を好意的に見ており、自分たちシンガポール人よりも親切な国として捉え、アニメーションや日本文化を楽しんでいるようだ。

 

本当にこの本は面白かった。シンガポール行きたい。