中村の読書日記

読書を中心に、徒然なるままに

19冊目

19冊目。

聞き出す力(2014)

聞き出す力

聞き出す力

 

 プロインタビュアー、吉田豪さんの本。

 

最近思うんだけれど、会話において重要なのは、聞き手です。聞き手が会話をコントロールしていると言っていい。だって、聞き手のリアクションによって話し手は内容を変えるし、落ち込むし、勢いづくから。

 

これは会話だけに言えることじゃない。

 

例えば、私は旅に出ると気まぐれでお土産を買ってくる(普段は買わない。何を買うのか考えるのがめんどくさいし、誰々に何を渡して。。なんて計算していたら日常にまみれちゃって旅が台無しになるので)のだが、渡したいなと思う相手はリアクションがいい人。中には「これ超不味い。お前、ちゃんと味見したのかよ」と文句をつけてくる奴がいて閉口する。こういう人にもちろん次はない。次があるのは「これすごく美味しい、ありがとう!」とか「へー、海外のお菓子って独特の味なんだねー」というポジティブリアクション、あるいは「うわ、まず!なんだよこれ!お前も食ってみろよw」のように笑いに変換できる人。

 

別に見返りを求めているわけじゃないけれど、実際にお金と時間と労力は使っているわけで。世界は感情で動いているのです。

 

で、吉田豪さんは、そこらへんがすごくわかっている人。基本的なスタンスとして、「私は敵じゃないですよ」と相手に伝えることを重要視している。徹底的に下調べをし、本人すら持っていないような昔の本を持参し、笑顔で話を聞く。相手は「ここまで私のことを調べてくれたんだ!」と好意をもつ(場合によっては逆効果の時もあるだろうけれど)。

 

インタビューの内容に関しても、彼は相手を攻めたり批評することはない。基本的に肯定して聞いていくスタイル。善悪をジャッジするのはあくまで読者だという考えのもと、あくまで拡声器としてどんどん話を聞いていく。カウンセリング的な一面もあるので、中には泣いてしまう人もいるとか。すごいな。

 

面白いなと思ったのは、とんでも話が出てきたときにこちらが引いてしまうと相手が警戒してブレーキをかけてしまうので、あえて控えめなリアクションや、「そんなの誰でもやってますよ」のような発言をすることで相手を促す手法。聞き手が話をコントロールするいい例だ。

 

初めて彼を見たとき、「うわ、こわ!!」と思ったけれど、彼の出演番組やyoutubeを見ていくうちに、むしろ逆で非常に穏やかな人だという印象を持った。面白さを求めてインタビューしていく吉田さん自体も面白いです。

www.youtube.com

 

ちなみに、この本が出たのは2014年末。前年2013年は阿川佐和子さんの「聞く力」がミリオンヒットを成し遂げている。この本はまさに便乗企画で、そのブラックさが表紙の色に現れているとのこと。 巻末には短いながら彼女との対談も載っている。

 

最後に、この本は実用書というよりもただの面白エピソード集じゃないかというツッコミに対し、「聞く力も面白エピソード集だったから問題ないはずです!」というのには笑った。聞く力も読みたいぞ。