中村の読書日記

読書を中心に、徒然なるままに

64冊目

64冊目。

 旅をしている今に読めて良かった本。

 

東浩紀を知ったのは、youtube。彼はいろんなところで対談やらニコ生やらに出演しており、かなりの音源がある。彼の話すテンポが好きだ。早口で説明もロジカルでわかりやすい。聞いてることが心地よい。落語家になったらいいのでないか。

 

この本は、普段哲学書なんて難しくて近寄らない人でも楽しめるように作られたもの。なるほど、道理で私も読めたわけだ。

 

内容をシンプルにいうと、旅のススメである。と言っても、決して自分探しを勧めているわけじゃない。

 

自分を探したければ、旅に行かなくてもすぐに終わる。自分の親を見ればいい。友人、恋人、母校、生まれた街を思い返せばいい。それであなたは説明できる。だって、人間は環境の産物だから。

 

私たちは環境に規定される。その中で思考し、気になったワードをグーグルで検索する。インターネットは今や膨大な規模で世界を覆い、必要な情報をなんでも教えてくれる。しかしここで重要なのは、「検索ワードは自分で見つけなければならない」ということ。検索ワードは環境に規定されている自分から生み出される。つまり、固定化されるということ。最近では、グーグル側が予測変換なんてことをしてくる。先を読まれている。

 

そんな世界をたまに脱出してみてはどうだろう。環境を変えて、自分を変えて、検索ワードを変えるのだ。そうやって自分を拡張していく。

 

定住していく人生を主にする「村人」、移動し続ける「旅人」、どちらもいいのだが、著者は3つ目のあり方として「観光客」を提示する。基本はどこかに定住し、休暇に無責任な観光客と変貌し、自分を拡張していくあり方。うーん、いいね。名作映画「LIFE」みたいな感じ。

 

海外ってやはり面白くて、日本にいる時とモードが変わってしまう。それは使っている言語が演劇的な英語だからということもあるだろう。東南アジアでは歩行者が優先ではないし信号も少ないので、自分から車を止めて進んで行くくらいじゃないといつまでも道を渡れないなんて事情もあるだろう。環境が人を規定する。

 

だから、海外で思いついたアイデアや生まれたモチベーションが、日本に帰ると消えてしまうことはよくあるし、旅先で出会った人に日本で再会するとつまらなく感じちゃうこともある。面白い。

 

この本を読んで、せっかく海外にいるんだから、もっとこのモードを味わって堪能してやろうと思った。日本にいる自分とは違う自分。今にしかできないことがある。思い切ってyoutuberなんて始めちゃってもいいかもしれない。海外にいるんだ、自己拡張に使わないとか時間が勿体無い。

 

旅に出たくなる本です。環境を意識して生きていこう。