最初の1冊
さて、記念すべき100冊読書プロジェクトの第1冊は、
「人生にゆとりを生み出す 知の整理術」だ。
私が好きなphaさん(以下敬称略)の新刊。
内容は、著者の知識のおすそ分けということで、インプット、アウトプット、そしてモチベーションやスケジュール管理のノウハウが詰まっている。
まさに知の整理術。
個人的には、アウトプット編、ブログのモチベーションのところが参考になった。
彼はかれこれ15年以上もブログを続けているのだけど、それは自分のためにやっていることが大きいと。
人に読んでもらいたい、稼ぎたいという思いもなくはないけれど、一番は「他人に見られてもいい自分の勉強ノート」としての利用にある。
自分が読んだ本の感想や考えたことを、人に見られてもいいようにある程度しっかりした文章にすることで整理され、また後で見返す時も楽なようにタグをつけてネットに上げる。
手っ取り早い勉強法は、人に教えること。
しかし自分が学習した範囲の知識が欲しい他者がすぐに周りにいるかというとまずいないし、人はだいたい自分の話を聞いて欲しいもので、聞き手を探すのにも一苦労。
ならばブログに上げてみよう。
面白がって読んでくれる人もいれば、知識豊富な人が間違いを指摘してくれるかもしれない。
いいアイデアだ。今回の100冊読むという私の目標にもぴったりである。
phaの良いところは、努力とか頑張るといった世の中に蔓延している根性論が全くなく、「とにかくだるいしめんどくさいけどそれでもやっていかないといけないのだからまあぼちぼち行きましょうや」という世界観にあると思う。
だから読んでいて疲れないし、何より「ダメ人間の気持ち」がわかっているので、書かれている知識がすごくフィットする。
例えば、文化資本という概念。
周りの文化的影響は大きいよという意味で、お金持ちの子供がお金持ちになりやすく、貧乏人の子供が貧乏人になりやすい理由の一つに、環境が挙げられている。
親が本を読む人だと、その光景を何度も見ているうちに自然と子供も本を読むようになり、逆に博打ばかりしていると子供もそっちに流されていきやすい。
脳にはミラーニューロンという神経細胞があって、これが共感などの元でもあるのだけど、相手の行動なのにあたかも自分が行動しているかのように反応する(だから鏡、ミラーという名称)。
この性質が人間に備わっている以上、環境の大きさから人は逃げられない。
だからもし自分が良い大学に行きたいなら勉強熱心な人たちの中に身を置けばいいし、おしゃれでありたいならクラスのおしゃれ連中と友達になって一緒に時間を過ごすと良い。
これは努力を要するものじゃない、ちょっとした工夫だ。
他にも、やる気というのは実は動かないと生まれないという面白い性質が脳にはあるので、まずはとにかく机に座ってみる。
本を開くのもだるいなら、とりあえず触るだけでも。
それで結果やはり勉強できなかったとしても、ちゃんと机には座ったんだから自分を褒める。
この作業を繰り返していくと次第に勉強できるようになるとか。これってちゃんと自制心持ってやれる人たちからすれば、「は、何甘えちゃってんの?」になるんだけど、ダメ人間にはそれすら難しいんですよね。
私は参考になりました。
最後に。すごくphaらしい文章が巻末にあって。
phaはちょっと前まで「日本一有名なニート」という肩書きがよく使われていた。
京都大学卒のニート、というキャラはやはり面白く、彼は有名になった。
でもみんな、だんだんと気づいてくるわけだ。
「なんか働きたくないとかだるいとか言ってるけどさ、結局は京都大学卒のブランドがあるし、なんだかんだ言ってこの人頭いいじゃん。文章面白くて本も出しているし、シェアハウスなんかやっちゃって。こんな人がニート語るなよ」
まあよくあるやつだよね。
自己啓発書の著者とかアイドルとか有名人に対して「それは才能があるからできるんです。誰でもできるわけじゃないのに無責任にいうなくそったれ!」
それを受けてなのか、phaは最後にこう書いた。
「たぶん、僕には何かの能力があるのだろう。この本は、そんな僕が身につけているものをいろんな人におすそ分けして、僕みたいな感じで生きられる人をもっと増やしたいと思って書いたものだ。別に僕が偉いわけじゃない、こんなものはたまたま身につけられたもの。だからこそ、独占するもんじゃないし、多くの人に共有されるといいなと思っている(多少編集)」
こういう考え方のphaが、私は好きです。
良書でした。折に触れて読み返すと思う。