中村の読書日記

読書を中心に、徒然なるままに

26冊目

26冊目。
頭が良くなる議論の技術(2013)

頭が良くなる議論の技術 (講談社現代新書)
 

これ、すごく良い本だった。

 

私自身、議論に苦手意識がある。というか、今まで生きてきた中でそんなに機会がなかった。だから、たまに大学院卒の友人に会って話し合いが始まるとすごく疲れたりした。腹も立った。こういうことがしたいんじゃないんだ!

 

そこらへんの感覚が、この本には細かく書かれている。日本人は一般に議論が苦手だ。なぜなら、日本は「同調文化」であり、人間関係が重要視されるから。反論すると、あくまでそれは意見上のことなのに人格否定だと感じて気分を害し、関係が壊れることが多くある。また、基本的に議論というのは対等な立場で行われるものだが、日本は、先輩後輩、上司部下、年上年下などの関係性から離れるのが難しいために生産的な話し合いが行われにくいと。

 

じゃあ西欧はどうかというと、古代ギリシア時代から議論が盛んに行われた。有名なソクラテスプラトンアリストテレスを始め、多くの人間が真理を追求して議論した。そんな素地がある欧米には「反論文化」が存在し、むしろ反論しないでただ受容するというのは褒められたものじゃない風潮があるらしい。だって、ただ受け入れるなら発展性がないし、退屈だから。

 

進化論で有名なダーウィンは、自分の説に反論して欲しかったそうだ。そうすればその反論を乗り越えた一つの上の説を作ることができる。反論をポジティブに捉えている。科学はそうやって前進してきた。

 

著者は明治大学の教授でもあるので、普段から学生相手に授業をする。すると、やはり議論の時間になると、帰国子女や留学生が抜きん出るそうだ。それは能力の差というよりも文化の差。

 

日本と西欧の文化の差を埋めるために、著者はまずブレインストーミングから始めるべきだと説いている。確かにブレストなら相手の意見に対して肯定しかしないので反論耐性のない日本人でも大丈夫。そこで意見をいうことに慣れたら、あくまでスポーツとしてディベートを行い、次に議論へと。ただやはり、欧米スタイルは日本人には少し強すぎて反発を招く恐れがあるそうだ。その時に使う、さらっと反論の方法なんかもあって面白い。

 

著者は若い頃にとにかくあちこちに議論をふっかけ、相手を説き伏せることが大好きだったらしい。そんな乱暴な態度を取り続けた結果、多くの友人を失ったとか。本書は著者の自戒の念もあって、あくまでスポーツとしての議論、その時間が終わったら「今日も楽しかった!」「いやあ、いい発見があったね!」と笑顔で握手できるような議論のすすめになっている。

 

議論の仕方なんて一度も習ってない初心者だからこそ、得るものがすごく多かった。折に触れて読み返すと思う。反論とは必ずしもネガティブなものではなく、むしろ反論のおかげで前に進める。勉強になりました。