中村の読書日記

読書を中心に、徒然なるままに

50冊目

久しぶりに読書感想をあげる。年内に100冊、ちょっとペースが落ちている。頑張らないと。

 

50冊目。

フィリピンバブ嬢の社会学(2017)

フィリピンパブ嬢の社会学 (新潮新書)

フィリピンパブ嬢の社会学 (新潮新書)

 

 これは名著です。

 

社会学と銘打っているものの、内容は大学院生が研究対象として近づいたフィリピン嬢に恋をし、付き合うことになり、さらには結婚までに至る過程を記載したもの。なお、あとがきにあるが、ピスボートで出会ったジャーナリストが著者を面白がり、協力して本書は作られている。

 

フィリピンパブの闇がわかりやすく描かれている。裏には暴力団がいること。昔はタレントビザで来ていたが、2005年から発行が難しくなり、代わりに偽装結婚から手に入る配偶者ビザでやってくること。契約期間は2ー3年で、給料は月に6万、休みは月2回。基本的に家と職場の往復で電車の乗り方すらわからない。多くの不自由を受け入れながらも、お金のために彼女たちは日本にやってくるのだ。

 

圧巻だったのは、フィリピン家族のあり方。以前読んだ本にもあったが、フィリピンは国民の1割が外国で生活している。そこで稼いだお金を家族に送金し、その消費で経済が回るというスタイルだ。フィリピン経済はこれから上向くと期待されているが、現状は失業者準失業者(自分が望むだけの労働量が手に入らない人)含めると20パーセント。彼女の家族もまたお金がなく、娘に頼るしかない。しかしその頼り方が、なんというか、えげつないのである。

 

なんの恥じらいもなく、際限なく請求してくる。そんなに渡せないというと、不機嫌になったり、「家族が困っているというのに助けないのねあんた。どうしようもないね!」と悪態をつく。さらに、娘が帰国すれば、どこからともなく親戚が集まってくる。帰国を歓迎するためではなく、お金を無心するためだ。この事実は、いくらフィリピンに仕事がなく貧しい状態だといっても、衝撃的だ。それでも娘はお金を支払う。だって「家族」だから。おいおい、家族ってなんだよ。

 

あまりに見かねた著者が、娘がいかに大変な労働をしてお金を稼いでいるかを彼女の父親に伝える。すると「そんなこと知らん!」と部屋を出ていってしまう。いやいや、それはあかんだろ。

 

以前どこかで、「フィリピン人と結婚するということは、その家族と結婚することである」と聞いたことがある。しかしこの本を読む限り、家族だけじゃ済まない。その「一族」を引き受けなければならない。それを知った上で結婚という決断を下した著者(まだ20代!)は只者じゃない。私なら絶対にできない。彼らの将来がうまくいくことを願う。

 

続編が出たら絶対に買う。名著ですよこれは。