20冊目
もう花粉本当に鬱陶しい。寒さが終わる春を喜べないって本当に悲しいわ。
20冊目。
聞く力(2012)
- 作者: 阿川佐和子
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2012/01/20
- メディア: 新書
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前回は吉田豪さんの「聞き出す力」、今回は本家の「聞く力」であります。
まず、結構分厚い本ですこれ。250ページ以上ある。ボリューミー。内容は確かに面白エピソード集だが、吉田さんのより硬派。インタビューを通じて気づいた会話やインタビューのコツが載っているので実用書としても使える。ただ、私はインタビューを生業にしている人間ではないし、あまり切実なものがないので一個一個のハウツーに関してはそんなに吸収できなかった。
では、この本で得たものは何か。
阿川佐和子さんの魅力と聞く力が人を救うという事実だ。
阿川佐和子さんは前からすごいなあと思っていた。慶應大学を卒業されている才女でありながら、爆笑問題太田光(私が大好きなお笑い芸人さんでございます)の下ネタやくだらない話にもついていける。すごく幅広いのです。大人。一方で、とても可愛らしいルックス。なんだこの人は。
今回初めて彼女の文章を読んでみて、また驚き。文体にも硬さと柔らかさが兼ね備えられている。育ちの良い印象を与える文章の中に、落語家のようなシャレ、ザ中年女性のセリフ。面白い。この本がミリオンいったのは、もちろんテーマも良かったけれど、彼女の文章力にある気がした。まあ文章力が何かって全くわからないんだけれど。
話を聞くことが大事ってのはもうすでに耳タコ。みんな言ってますよ。自己啓発書にはそんなのばかり。人間には承認欲求があるから、基本的に誰もが自分の話を聞いて欲しい、故に需要はありまくり。承認欲求を満たすってのは、お腹が減っている人に食べ物を与えるのと同じようなものだ。だから聞き上手はモテるし、人も情報も集まる。
本書の前書きに、東北大震災の被災地の人、森林で働く名人の2つのエピソードがある。
震災で家が流され大変な思いをした人たちはその苦しみを吐き出したい、誰かに聞いて欲しい。ところが避難所で話をしようにも、「私のところの方がもっとしんどいよ!」とさらに大変な相手に吸収されてしまう。ただ話を聞くだけで、気持ちはほんの少しでも楽になる。
全国の高校生100人が、森林で働く名人100人の元を訪れ、インタビューする「聞き書き甲子園」というものがある。高校生は苦しい思いをしながら懸命に名人に話を聞いて、書きまとめる。このイベントの趣旨は、どんどん人手がなくなって消滅していくであろう森林の仕事を日本の若者に知ってもらうというもの。このイベントは若者の勉強になっているだけではなく、名人たちにも笑顔を与えている。家族含め誰も興味を持ってくれない自分の仕事について、質問を投げかけられたことが嬉しかったのだ。
話を聞くってことは日常に溢れていて、誰もが自然にやっていること。しかしだからこそ無意識で行われるもので、あまり自分でその能力を考える機会がない。今日からは少しずつ意識して、より愉快なおしゃべりができればいいなということで。話を聞けない人は、絶対に損すると思う。